卸売ECサイトを構築して、今までのFAXや電話、メールなどのアナログの受発注からDX化を検討している企業は増えており、2024年のBtoBのEC化率が43.1%※(BtoCのEC化率は9.78%)に達していることからも、デジタル化が進んでいることがわかります。
※引用:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」
卸売ECサイトを作るにあたっては、主に以下の3つの方法が存在します。
方法①BtoB-EC専用のクラウドシステム
方法②パッケージECシステムをカスタマイズ
方法③フルスクラッチ開発
この中で、最も費用が安く、導入期間が短い方法が以下のような「BtoB-EC専用クラウドシステム」を利用することです。
なぜなら最初から卸売ECサイトに必要な機能が汎用的に実装されており、またCSVやAPI連携を利用して基幹システムなどの社内で利用する他のシステムと連携することができるからです。
本日は、スマレジECでマーケティングを担当している筆者が、卸売ECサイトの構築方法について解説をいたしますので、卸売事業者やメーカーで、DXを検討している方はこの記事を最後までご覧ください。
卸売ECサイトの3つの構築方法
まずは、以下の3つの卸売ECサイトの構築方法の比較表をご覧ください。
◆卸売ECサイトの3つの構築方法
|
初期費用 |
月額費用 |
導入期間 |
機能性 |
システム連携 |
最新性 |
BtoB-EC専用
クラウドシステム |
10万円~ |
数万円~ |
最短1ヶ月 |
〇 |
○ |
◎ |
パッケージECシステム
をカスタマイズ |
数千万円~ |
数十万円~ |
半年~ |
◎ |
◎ |
× |
| フルスクラッチ開発 |
数千万円~数億円 |
数十万円~ |
半年~ |
◎ |
◎ |
× |
まず、「早く、安く」導入できる方法は「①BtoB-EC専用クラウドシステム」となります。なぜなら、最初から卸売に必要な以下のような機能が実装されており、すぐに導入することができるからです。
しかし、自社の業務ワークフローに基づいた独自のシステムを作りたいという要望の場合は、②か③の方式となりますが、カスタマイズ開発となるので、開発期間が数年かかるということも珍しくはなく、開発費用も数千万円から数億円となります。そのため、まずはBtoB-EC専用クラウドシステムを導入を検討して、自社の業務ワークフローをシステムに合わせることで、利用できるかどうかを検討することで、費用を大幅に抑えて、DX化を行うことができるのです。
また、クラウドシステムには、一度導入すると、セキュリティーや機能が自動で更新・バージョンアップされるので、セキュリティー対策や保守費用も抑えることができます。
それでは、次に「卸売ECサイトを導入するため」のコツをひとつずつ解説します。
卸売ECサイト導入のための5つのコツ
それでは優先度が高い順に5つのコツを解説します。
コツ①卸売ECサイトに必要な「BtoB機能の数」が最初から豊富であること
まず「卸売ECサイトに必要な機能」が、導入を検討している「ECサイト」に最初からどの程度実装されているのかを事前に把握しておくことが重要です。なぜなら最初から汎用的な機能として多くの機能がBtoB-ECに備わっていれば、その分、カスタマイズを行う必要がなくなり、費用や導入工数を抑えられるからです。
以下は、弊社の「スマレジEC・B2B」に搭載されている標準機能の一例です。
◆スマレジEC・B2Bの搭載れている標準機能の一部
・受注管理
・取引先別価格調整
・販路設定
・決済手段設定
・見積機能
・在庫管理
・営業支援機能
スマレジEC・B2B公式サイトより引用
このように、BtoB専用システムであれば「卸売販売」に必要な多くの機能が標準で実装されており、追加開発コストを抑えることができるのです。
一方、「自社のワークフローに完全に合わせたBtoBシステム」を構築したい場合は、パッケージのカスタマイズやフルスクラッチでの開発が必要になります。パッケージを選定する際は、BtoB機能が豊富であり、追加開発を最小限に抑えられるパッケージを選定することがポイントです。そうすることで開発費用を抑えられ、カスタマイズの領域が少ないことで比較的安定したシステム運用が可能となるからです。
ゼロから開発する「フルスクラッチ開発」は、どんな機能でも実現できるという大きなメリットがある一方で、卸売ECサイトに必要な機能をすべてゼロから開発する必要があるため、最も費用のかかる方法となります。ただし、フルスクラッチ開発は「自社の独自要件に合わせたシステム構築ができる」という唯一の方式でもあります。そのため、自社業務のワークフローを重視する大手企業には適した方法と言えるでしょう。
しかし、筆者の意見ですが、EC業界においては年々クラウドやパッケージの機能が拡張しているため、フルスクラッチ開発のメリットは失われつつある印象です。自社の固有業務が多い企業も、まずはクラウドサービスやパッケージも検討してみるべきでしょう。
コツ②既存のシステムやツールとどこまでシステム連携できるか?
卸売販売の業務ワークフローは非常に複雑です。そのため、商談から受発注、納品に至るまでの各工程では、以下のように多くのシステムやツールを利用する必要があります。
◆卸売販売に利用する主なシステムやツール
・商品カタログ(商品管理)
・在庫管理
・仕入管理(購買管理)
・取引先管理(顧客管理)
・与信管理
・帳票作成(見積書、請求書、納品書等)
・ワークフロー管理
・値引申請
・受発注管理
・配送管理
・EDI連携
・会計システム
ここで挙げたのは、あくまで一般的な卸売販売に必要とされるシステムやツールの一例です。実際には、企業毎の業務内容や取引形態によって、さらに多くのシステムが関係している場合もあります。
そのため、卸売ECサイトの導入にあたっては、次の2つの観点を明確にしておくことが重要です。
◆卸売ECサイトに重要な2つの観点
卸売ECサイトで「どこまでの機能」をシステムとして取り込めるのか
卸売ECサイトで「既存のシステム」とどこまで連携できるのか
例えば、卸売ECサイトを導入することで「商品カタログ」や「受発注管理」「帳票作成」などはECサイトの機能内で実現できます。また、「在庫管理」や「配送管理」とのデータ連携も比較的容易です。
一方で、自社固有の「与信管理」や「ワークフロー管理」などの機能をECサイトで取り込んだり、外部システムとの連携機能を開発したりする場合は、工数が大きくなり、場合によってはそれだけで数千万円規模の開発費用が発生することもあります。
このように、卸売ECサイトの導入では「○○システムとは連携しない」という判断や線引きを事前に明確にしておくことが、自社に最も適したシステムを選定するうえで欠かせないのです。
コツ③ITが苦手な取引先にも使いやすい管理画面であるか?
BtoB業界は、経済産業省が「DXレポート※」を公表し、強いメッセージを発信する必要があったほど、いまだにアナログな業務環境が多く残る分野です。そのため、ITが苦手な担当者も多く、どんなに優れた機能や高度なシステム連携を実現しても、取引先が実際に使ってくれなければ意味がありません。
※ITシステム「2025年の崖」の克服と DXの本格的な展開
したがって、BtoB-ECでは「自社にとって使いやすい」だけでなく、取引先にとっても直感的に操作できる管理画面であることが重要です。
弊社の「スマレジEC・B2B」では、誰でも迷わず操作できるシンプルなユーザーインターフェースを採用しています。さらに、取引先がスムーズに発注できるよう、「簡単発注」機能を標準で搭載しており、スマートフォンからも発注処理を行うことができます。
◆カンタン発注フォーム機能(スマレジEC・B2B)

画像引用:BtoB受発注電子化/自動化ツールのスマレジEC・B2Bが「かんたん発注フォーム機能」を実装致しました。
これにより、取引先は外出先や現場からでも手軽に注文が可能です。ただし、どれほど操作性の高いシステムであっても、導入直後は取引先にとって不慣れな部分が出てくるものです。そのため、以下の準備が必要です。
◆新システム導入時に必要なこと
・新システムの操作説明会や勉強会の開催
・導入初期における専任サポート担当の配置
といったサポート体制を整えることで、取引先の利用促進と定着をスムーズに進めることができます。
コツ④従来のアナログ受発注にも対応システムを導入する
多くの取引先の中には、卸売ECサイトを導入しても、
「うちは従来どおりFAX発注しかしない!」
「ITは苦手だから使えない!」
といった理由で、新しいシステムを利用してくれないケースがあります。また、特定の取引先に対しては、長年続けてきた受発注方法を急に変えられない事情がある場合もあります。
このような場合でも、アナログ受発注(FAX・電話・メール・口頭発注)を卸売ECサイトの仕組みの中に取り込む方法が2つあります。
① FAXをスマホで撮影してOCR処理する
FAXで届いた注文書をスマートフォンで撮影し、その画像データをOCR(文字認識)機能で自動的にシステムへ取り込む方法です。
◆以下は弊社スマレジEC・B2Bの「スマホdeOCR」

画像引用先:GPT-4o搭載のAI-OCRスマホdeOCR
弊社の「スマレジEC・B2B」では「スマホdeOCR」という機能を搭載しており、FAX注文をスマホから簡単にデータ化し、受注処理を自動で行うことが可能です。
② 代理注文機能を利用する
もう一つの方法が代理注文機能です。これは、アナログで受けた注文内容を自社の営業担当者が管理画面から代行入力し、システム上で正式な受注データとして処理する仕組みです。
◆代理注文機能のイメージ

※画像は筆者が作成
この機能を活用することで、FAX・電話・メールなどあらゆるアナログ受注も、すべて卸売ECシステム上で一元管理することができます。結果として、新システム導入後も従来取引先を取りこぼすことなく、全受注データを電子化することが可能になります。
コツ⑤社内に新システムを導入するために「もっとも時間がかかる業務」を短縮すること
卸売ECサイトを導入する際、多くのスタッフが反対したり、前向きになれなかったりすることがあります。 人は誰しも、慣れ親しんだ仕組みや手順を変えることに抵抗を感じるものです。
しかし、こうした社内の空気を変えるには、受発注業務の中で最も時間がかかっている工程を劇的に短縮することが効果的です。目に見える成果を出すことで、新システムの支持者を増やすことができます。
筆者の経験では、過去にB2Bシステムを刷新した際、多くの営業担当者や事務スタッフが当初は反対していました。ところが、新システムで「見積書をワンクリックで自動作成できる」ようになった瞬間、皆が「これは便利だ!」と納得し、抵抗感が一気になくなったのです。
従来のアナログ環境では、見積書をエクセルで個別に作成し、メールで送付するのが一般的でした。しかし、「スマレジEC・B2B」のようなB2B専用クラウドシステムを導入すれば、見積書は取引先自身がボタンひとつで作成・ダウンロードできます。その結果、自社で作成・送付する手間が大幅に削減され、見積対応にかかる時間をほぼゼロに近づけることが可能です。
このように、卸売ECサイトを導入して「時間のかかる業務を一気に短縮」することで、社内の理解と協力が得やすくなり、導入効果も早期に実感できます。スマレジEC・B2Bではこのような業務効率化に成功した事例が豊富にあるので、以下の事例もあわせてご覧ください。
◆スマレジEC・B2Bの事例
ここまで、卸売ECサイトの導入のコツについて解説してきましたが、ここからは卸売における受発注業務をEC化するメリットについて詳しく解説いたします。
卸売ECサイトを導入するメリット
メリット①受発注業務をデジタル化することで、業務効率が大幅に向上
まず、FAXや電話、メールの受発注と比べると、卸売ECサイトではボタンひとつで受発注が可能になるため、大幅に業務効率を向上させることができます。下記の事例においては、受発注での入力作業がなくなり、生産性を高めることにつながりました。
◆スマレジEC・B2Bの事例
このように、受発注にともなう見積書などの帳票も自動で作成されるので、営業社員は事務作業から解放されて、営業活動に集中することができます。
メリット②おすすめやランキングから他商品への宣伝や誘導ができる
ECサイトであるため、注文画面には「売れ筋商品」や「おすすめ商品」を掲載できるため、取引先に他の商品への興味を引き出して、アップセルやクロスセルをさせやすくなります。
◆ECサイトの画面におすすめやレコメンドを表示

※イメージ画像は筆者作成
このような仕組みはECサイトである大きなメリットであり、EDIや専用システムにはない機能となります。
メリット③商品詳細情報ページを動画
B2Bで扱われる商材の多くは、営業の説明が必要であったり、別途資料を送付する必要がありますが、ECサイトであれば、商品説明欄に詳細に説明文を書いたり、動画を設置することができます。そのため取引先が商品ページを見て、ある程度商品への理解を自らすすめることができます。
メリット④24時間365日対応
デジタル化されていなければ、定休日や深夜早朝の営業時間外に受発注を受け付けることはできませんが、ECサイト化されていれば、24時間365日注文を受け付けることができます。
もちろんFAXやメールでも24時間365日注文を受けるつけることは可能ですが、営業時間外のため、受注漏れをしたりミスをする可能性がありますが、卸売ECであれば、必ず受注を受け付け、もし受注漏れがあってもすぐに気が付くことができます。
卸売ECサイトを導入するデメリットは「たった2つ」
ここまで卸売ECのメリットを解説しましたが、少ないですがデメリットも2つ存在します。
デメリット①災害等でインターネットが利用できない場合は、受発注ができない
卸売ECはインターネットを前提としたシステムのため、発注側・受注側いずれかの通信環境が停止すると、受発注業務を行うことができません。特に、地震や停電などの災害時にはネットワーク障害が発生し、発注処理が一時的に滞るリスクがあります。
また、システムをクラウド型ではなく、自社サーバー(オンプレミス)で運用している場合は、サーバー自体が被災するとアクセス不能になる可能性もあります。
そのため、災害時のBCP(事業継続計画)としては、BtoB-EC専用のクラウドシステムを選択し、冗長化やバックアップ体制を整えておくことが重要です。スマレジEC・B2Bのようなクラウド型であれば、別地域のデータセンターからの復旧が可能なため、リスクを大幅に軽減できます。
◆BtoB-EC専用クラウドシステム
デメリット②アナログ受発注から卸売ECサイトの移行はカンタンではない
もう一つのデメリットは、社員や取引先が長年アナログな受発注に慣れている場合、システム移行が容易ではないという点です。特に卸売業では、FAX・電話・メール・口頭といった従来の手法が根強く残っており、これまでのやり方を変えたくないという心理的ハードルが存在します。
さらに、卸売業務は取引条件や値引率、納期調整などが複雑で、取引先ごとに異なるルールで運用されていることも多くあります。そのため、これらの業務フローをすべて再現する形でスクラッチ開発(ゼロからシステム構築)を行うと、開発期間が1年以上に及ぶケースも少なくありません。しかも、導入後に社員や取引先がシステムを使いこなせなければ、せっかくの投資が無駄になってしまいます。
社員は「今までのやり方で十分」「新しいシステムは手間が増える」と感じやすく、取引先も「うちはITが苦手だから」「これまで通りFAXでいい」と敬遠される場合があります。
このような背景を踏まえると、卸売ECサイトを導入する際には、最初から大規模なシステム開発を行うよりも、まずは導入のハードルが低いクラウド型システムを利用することが現実的です。
クラウド型であれば、初期費用を抑えながら短期間で運用を開始でき、社員や取引先に徐々に利用を浸透させることが可能です。また、機能の拡張やカスタマイズも段階的に行えるため、現場の運用に合わせて柔軟に調整できます。
導入初期は、まず社内の理解を得ることが第一歩です。小規模な取引先や社内の特定部門から試験的に運用を始め、成功体験を積み重ねながら段階的に拡大していくことで、スムーズな移行が実現できます。
ここからは、卸売ECサイトに必要な機能について詳しく解説していきます。
卸売ECサイトに必要な機能
卸売ECサイトに必要な主な機能は以下の通りです。
◆卸売ECサイトに必要な主要機能の一覧
| 機能名 |
機能概要 |
| 受注管理機能 |
受注のデータを一覧表示します。また、ECサイト外の注文も個別に入力してデータ化も可能 |
| 取引先別価格調整機能 |
卸売業界では、取引先毎に掛け率が異なるケースがおおく、取引先毎に掛け率は値段を調整 |
| 販路設定機能 |
取引先別に商品を開示・非開示ができる機能 |
| 決済手段設定 |
取引先毎に、決済手段を変更する機能。請求書払いや後払い、クレジットカード決済等を設定 |
| 見積機能 |
購入ページから、取引先が自身で見積書を作成し、ダウンロードすることができる |
| 在庫管理機能 |
在庫を管理する機能であり、在庫数を購入ページに表示することで、取引先も在庫数を把握できる |
| FAX注文受付 |
FAX注文を自動でデータ化し、卸売ECサイトに受注データを取り込む機能 |
機能の詳細はスマレジEC・B2B機能一覧をご覧ください。
卸売ECサイトでは、取引先ごとに価格・商品・決済手段などの条件が異なるケースが一般的です。そのため、取引先別の設定を柔軟に行える機能を備えたECシステムを選定することが重要です。こうした取引先毎の柔軟性の高さが、業務効率化だけでなく、取引先の満足度の高さに結びつき、中長期的に売り上げにも寄与するシステムとなるのです。
卸売ECサイトを構築・リプレイスするなら「スマレジEC・B2B」を導入しよう
卸売ECサイトを構築・リプレイスするなら、B2B機能を最初から備えている「スマレジEC・B2B」の導入がおすすめです。ペーパーレス化により手作業が大幅に減り、受発注にかかる工数を削減できます。その結果、処理漏れや転記ミスを防止しながら、正確でスピーディーな取引を実現します。
「スマレジEC・B2B」は、企業間の受発注業務をシステム上で完結できるプラットフォームです。これまでメール・FAX・電話など複数チャネルに分散していたやり取りを一元化することで、煩雑になりがちな受発注フローを効率化し、業務負荷を軽減します。
さらに、卸売事業に必要なBtoB-EC機能を標準搭載しており、複数の取引先との少量多品種取引にも柔軟に対応できます。また、見積発行、売掛決済、取引先別価格設定などの機能を備えており、貴社の既存システムとの連携によって企業間取引全体をより効率的に運用できます。
「スマレジEC・B2B」の詳細や導入事例については、以下の公式サイトから無料の資料ダウンロードをぜひご利用ください。
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