市場規模が急拡大する4つの背景
BtoB-EC市場が急成長している理由は多岐にわたりますが、その中でも以下に挙げる4つの背景が特に注目されています。
1. アナログ業務にEC化の余地
BtoB-EC市場の急成長には、長らくアナログで行われてきた業務プロセスにデジタル技術が取り込まれていることが影響していると考えられます。昭和時代から続く電話やFAX、企業への訪問といった従来の手法は、近年になってようやくその限界を迎えました。受発注業務や請求書発行業務など、EC化により効率化が可能な業務が多く、これらの業務のデジタル化が進むにつれ、BtoB-EC市場も拡大しています。また、この変化は急激なものではなく、数年にわたり一貫して進展してきたものと言えます。これは、日本企業が周囲の動向を見極め、好調なら追随する姿勢が影響していると考えられます。
2. 働き方改革による後押し
2019年に施行された「働き方改革」もBtoB-EC市場の拡大を牽引しています。この改革の中で重要視されたのが「長時間労働の是正」です。厚生労働省は、生産性向上と働く環境の改善を企業に求めており、生産年齢人口の減少や働く方の多様なニーズに対応する必要があります。生産年齢人口の減少にもかかわらず、業務の正常な運営を維持するためには、無駄な手間のかかる業務を見直し、効率的に改善する必要があります。電話やFAXでのやりとりが多かった受発注業務や多数の書類に悩まされていた請求書発行業務、そして入金確認など、これらの業務は人間の手間が多くかかっていました。そのため、これらの業務のデジタル化により、EC化の効果が出やすかったといえるでしょう。
3. ITインフラの整備とデバイスの普及
BtoB-EC市場の拡大には、ITインフラの整備とデバイスの普及も大きく寄与しています。インターネット環境は都市部だけでなく、全国的に広がり、大企業から中小企業まで、誰でも簡単にインターネットを利用できるようになりました。また、マルチデバイス化により、パソコンが使えない場合でもスマートフォンなどを活用し、より多くの人がシステムに接続し、業務を行えるようになりました。これらの環境整備もBtoB-EC市場拡大に影響しています。
4. 日本特有の商習慣に対応
BtoB取引において、同じ商品でも取引先によって価格が異なるという日本特有の商習慣にもBtoB-EC市場は柔軟に対応しています。また、すべての商品を一律に見せるのではなく、取引先の信用度に応じて商品を提示するといった、BtoCとは異なる商習慣にも対応する必要があります。そのため、ECシステムには高い柔軟性と自由度が求められ、これに応じて独自のシステムが開発され、BtoB-ECアプリやシステムが進化しました。これが中小企業でも導入しやすくなり、市場規模の拡大に寄与したと言えます。